本棚を整理したいと思っても、いざ本を手に取るとなかなか捨てられない。
もう何年も開いていない本なのに、「いつかまた読むかもしれない」と棚へ戻してしまう。読み終わった本だけでなく、途中まで読んだ本や、まだ読んでいない本も増え続けている。
本が捨てられないのは、単に物を捨てるのが苦手だからとは限りません。
その本を読んでいた時期のこと。夢中になった物語。誰かにすすめられた記憶。これから読みたいと思っていた気持ち。
本には、内容だけでなく、自分の時間や記憶も結びついています。そのため、本を手放すことが、読書体験まで失うことのように感じられるのです。
けれども、本を手放すことと、その本との出会いを忘れることは同じではありません。
この記事では、本棚を無理なく整理するための基準と、本を手放す前に読書の記憶を残しておく方法を紹介します。
本が捨てられないのは、記憶まで失いたくないから
本には、そのときの自分が残っています。
学生時代に繰り返し読んだ小説。仕事に悩んでいたときに買った本。旅行先の書店で偶然見つけた一冊。大切な人からもらった本。
たとえ内容を細かく覚えていなくても、表紙を見れば、読んでいた場所や当時の気分を思い出すことがあります。
だからこそ、本をゴミとして処分することに抵抗を感じるのは自然なことです。
また、まだ読んでいない本には、「いつか読みたい」「こんなことを知りたい」という未来の自分が託されています。手放すことが、かつての興味や目標を諦めるように感じられる場合もあります。
本棚を整理するときは、こうした気持ちを無視して、冊数だけを減らそうとしないことが大切です。
本棚整理の目的は、できるだけ本を減らすことではない
本棚を整理するというと、「何冊捨てられたか」を成果にしたくなります。
しかし、本棚は少なければ少ないほどよいわけではありません。何度も読み返したい本や、持っているだけでうれしい本まで無理に手放す必要はありません。
本棚整理の目的は、自分がこれからも付き合いたい本を見つけやすくすることです。
棚に本が詰め込まれすぎていると、本を探しにくくなり、持っていること自体を忘れてしまいます。大切な本が、読まない本の間に埋もれてしまうこともあります。
残したい本を選ぶことは、自分がどのような本を読んできたのか、これから何を読みたいのかを見直す作業でもあります。
本を残すか迷ったときの5つの基準
すぐに判断できない本は、「必要か不要か」だけで考えると迷ってしまいます。次の5つの質問を、一冊ずつ考えてみましょう。
1.これから一年以内に読み返したいか
「いつか読むかもしれない」ではなく、もう少し具体的に考えます。
今から一年以内に、この本を開く場面を想像できるでしょうか。
好きな小説を再読したい。仕事で参照する予定がある。家族に読んでほしい。続編を読む前に読み返したい。
具体的な用途が思い浮かぶ本は、手元に残す理由があります。何年も「いつか」と思い続けているだけなら、一度手放す候補にしてもよいでしょう。
2.もう一度入手するのが難しい本か
絶版になっている本、少部数で刊行された本、古書でしか手に入らない本は、手放すと再入手が難しい場合があります。
反対に、現在も広く流通している本や、図書館で借りられる本、電子書籍版がある本は、必要になったときに再び読むことができます。
「手元からなくなったら二度と読めないのか」を調べると、判断しやすくなります。
3.その本でなければ残せないものがあるか
同じタイトルを買い直せたとしても、その一冊にしかない価値もあります。
- 著者のサインが入っている
- 贈ってくれた人のメッセージがある
- 自分で書き込みや付箋を残している
- 装丁や挿絵が気に入っている
- 特定の版や翻訳に思い入れがある
このような本は、単なる文章の入れ物ではありません。自分にとっての価値を、希少性や中古価格だけで判断しないようにします。
4.持っていること自体がうれしいか
読む予定がなくても、本棚にあることがうれしい本はあります。
好きな作家の本を並べて眺めたい。美しい装丁を手元に置きたい。自分に大きな影響を与えた一冊を残したい。
実用性だけで考える必要はありません。「好きだから持っていたい」という理由も、十分に残す基準になります。
5.罪悪感や義務感だけで残していないか
高かったから捨てられない。人にすすめられたから読まなければならない。名作だから最後まで読まなければならない。
こうした罪悪感や義務感だけで、本を残していることがあります。
その本を目にするたびに、「まだ読んでいない」「途中でやめてしまった」と責められているように感じるなら、手放すことで気持ちが軽くなるかもしれません。
読めなかった本も、その時点の自分には合わなかったという読書の記録です。最後まで読まなかったからといって、その本と出会ったことが無駄になるわけではありません。
「残す・手放す・迷う」の3つに分ける
すべての本をその場で決めようとすると、整理が進まなくなります。
まずは、本を次の3つに分けます。
- 残す本
- 手放す本
- まだ迷っている本
「迷っている本」を用意することで、無理に結論を出す必要がなくなります。
迷う本は箱や棚の一角にまとめ、三カ月後や半年後にもう一度見直します。その間に一度も思い出さなかった本や、箱から出さなかった本は、手放しても困らない可能性が高いでしょう。
ただし、期限が来たら必ず捨てなければならないわけではありません。もう一度手に取って、やはり残したいと思ったなら、本棚へ戻してかまいません。
本を手放す前に、読書の記憶を残しておく
本そのものを手放しても、その本を読んだことや、何を感じたかは記録できます。
手放す前に、次のような情報を残しておきましょう。
- 本のタイトルと著者名
- 読んだ時期
- どこで、なぜその本を知ったか
- 印象に残っている場面や考え方
- 読み終えたときの短い感想
- 途中で読むのをやめた理由
- 手放すことにした理由
- 将来もう一度読みたいか
立派な書評を書く必要はありません。
「大学一年の夏に読んだ」「結末は忘れたが、夜の場面が好きだった」「今の自分には難しかった」「また十年後に読みたい」といった一言でも、その本との関係を思い出す手がかりになります。
表紙の写真だけを残すより、自分の言葉を一つ添えておくほうが、あとで見返したときに当時の記憶が戻りやすくなります。
「手放した本」のデジタル本棚を作る
読書管理サービスのブクマでは、読んだ本や気になる本を登録し、感想・評価・メモを残せます。また、自分のスタイルに合わせてブックリストを作り、本を分類できます。
本棚を整理するときは、「手放した本」というブックリストを作るのも一つの方法です。
実際の本棚から本がなくなっても、デジタル本棚には、その本のタイトルと記録が残ります。
さらに細かく整理したい場合は、次のようなリストに分けてもよいでしょう。
- 読み終えて手放した本
- 途中でやめた本
- またいつか読みたい本
- 図書館で借り直したい本
- 電子書籍で買い直したい本
- 誰かに譲った本
手放した本を記録しておけば、古書店や図書館で再会したときにも、以前読んだ本だと気づけます。
「もう一度読みたい」と思ったときは、買い直したり、図書館で借りたりすればよいのです。本を一度手放したからといって、その本との関係まで終わるわけではありません。
手放すと決めた本を、すぐにゴミにしなくてもよい
本を手放す方法は、捨てることだけではありません。
- 古書店や宅配買取を利用する
- フリーマーケットサービスで販売する
- 家族や友人に譲る
- 図書館や施設の寄贈条件を確認する
- 地域の古本回収や交換会を利用する
- 資源回収に出す
自分には必要なくなった本でも、別の誰かにとっては探していた一冊かもしれません。
ただし、状態の悪い本や、書き込み・汚れのある本は寄贈を受け付けてもらえない場合があります。相手の負担にならないよう、事前に条件を確認しましょう。
誰かに譲った本なら、読書記録に「友人に譲った」と書いておくのもおすすめです。本がその後どこへ行ったのかも、その一冊の記憶になります。
一度に本棚全体を整理しなくてもよい
本棚を一日ですべて片づけようとすると、判断に疲れてしまいます。
最初は十冊だけでもかまいません。「この棚の一段だけ」「今日は文庫本だけ」のように、範囲を小さく区切ります。
一冊ずつ手に取り、残したい理由や手放す理由を考える時間も、本棚整理の一部です。
急いで冊数を減らすより、自分なりの基準を見つけることを優先しましょう。一度基準ができると、新しく本を買うときにも、「本当に手元に置きたいか」「読み終わったあとどうしたいか」を考えやすくなります。
本を手放しても、読書体験は残せる
本が捨てられないのは、その本が単なる物ではないからです。
本には、読んだ時間、当時の自分、知ったこと、感じたことが結びついています。だから、無理に割り切って捨てる必要はありません。
それでも本棚を整理したいときは、まず残したい本を選び、迷う本には考える時間を与えます。そして、手放す本については、タイトルや感想を記録しておきます。
本を手放すことと、その本との出会いを忘れることは同じではありません。
物理的な本棚には、これからもそばに置きたい本を。デジタルの本棚には、これまで出会った本の記憶を。
ブクマを使って、自分だけの読書の履歴を残してみてはいかがでしょうか。

