本を読み終えたあと、何か記録を残しておきたい。
そう思って読書ノートや読書管理アプリを開いたものの、いざ書こうとすると何も思いつかない。結局、本のタイトルと読了日だけを登録して終わってしまう。
そんな経験はないでしょうか。
学校の読書感想文を思い出して、「本の感想は、ある程度まとまった文章で書かなければならない」と考えてしまう人もいるかもしれません。しかし、自分のためにつける読書記録に、立派な文章は必要ありません。
「主人公が苦手だった」
「途中は退屈だったけれど、最後の一行がよかった」
「雨の日に読み返したい」
これだけでも、十分に読書記録になります。
この記事では、感想が思いつかない人でも続けられる読書メモの書き方を紹介します。
読書記録は「本の内容を説明するもの」ではない
読書記録を書こうとすると、多くの人が最初に「あらすじを書かなければ」と考えます。
しかし、あらすじを書く作業は意外と大変です。登場人物や出来事を整理し、まだ読んでいない人にも伝わるように説明しようとすると、読書記録というより本の紹介文になってしまいます。
自分のための読書記録であれば、本の内容を最初から説明する必要はありません。
大切なのは、その本を読んだときに自分が何を感じたか、何が引っかかったかを残しておくことです。
同じ本を読んでも、感想は読む時期によって変わります。以前は何とも思わなかった場面が強く印象に残ったり、反対に、昔は好きだった人物を苦手に感じたりすることもあります。
読書記録に残るのは、本の情報だけではありません。その本を読んでいた時点の、自分自身の記録でもあるのです。
感想が思いつかないときの7つの書き方
「自由に書いてください」と言われると、かえって何を書けばよいのかわからなくなります。
そんなときは、いくつかの決まった質問から一つを選んで答えてみましょう。すべての項目を書く必要はありません。
1. 一番印象に残った場面を書く
本全体について語ろうとせず、一つの場面だけを選びます。
「二人が駅で別れる場面が印象に残った」
「誰もいない家に主人公が戻ってくる場面が怖かった」
これだけでも、その本を思い出すための手がかりになります。
なぜ印象に残ったのかまで書けそうなら、一言だけ付け加えてみましょう。
「派手な場面ではないのに、妙に寂しかった」
「それまでの話が全部違って見えた」
理由をうまく説明できなくても問題ありません。「なぜかわからないが気になった」という感想も、立派な記録です。
2. 好きだったところを書く
本の評価を決める必要はありません。
物語全体がそれほど好きではなかったとしても、会話や文章、登場人物、舞台設定など、部分的に好きだったところがあるかもしれません。
「話よりも町の雰囲気が好きだった」
「主人公は苦手だったが、妹との会話はよかった」
「短い文章なのに、風景が見えるようだった」
本を一冊丸ごと評価しようとしないことが、感想を書くハードルを下げるコツです。
3. 苦手だったところを書く
読書記録には、よかったことだけを書く必要はありません。
「登場人物の区別がつかなかった」
「中盤から話が動かず、読むのがつらかった」
「文章は好きだが、結末には納得できなかった」
こうした率直な感想も、あとで読み返すと役に立ちます。
世間で高く評価されている作品でも、自分には合わないことがあります。自分のための読書記録であれば、無理に褒める必要はありません。
ただし、「つまらなかった」だけで終わらせず、何が合わなかったのかを一言添えると、自分の読書傾向が少しずつ見えてきます。
4. 読んでいるときの気分を書く
内容ではなく、本を読んでいたときの気分を記録する方法もあります。
「静かな気持ちになった」
「ずっと落ち着かなかった」
「読み終わったあと、しばらく別のことができなかった」
「面白いというより、妙に頭に残った」
本の感想を「面白かったか、つまらなかったか」だけで考えると、言葉に詰まりがちです。
どんな気分になったかを考えると、もう少し細かな感想を見つけやすくなります。
5. 読んだ状況を書く
感想がどうしても思いつかない日は、本を読んだ状況だけを記録してもかまいません。
「旅行中の電車で読んだ」
「眠れない夜に少しずつ読んだ」
「仕事が忙しく、読み終えるまで一か月かかった」
「古本屋で偶然見つけた」
本の記憶は、読んでいた場所や季節と結びついていることがあります。
数年後に記録を読み返したとき、本の内容よりも、当時の生活を鮮明に思い出すかもしれません。
6. 誰にすすめたいかを書く
「どんな人に合いそうか」を考えるのも、感想を書く方法の一つです。
「静かな話が好きな人にすすめたい」
「謎がすべて説明される作品を求める人には合わないかもしれない」
「短篇を少しずつ読みたい人によさそう」
誰にすすめたいかを考えると、その本の特徴が自然に見えてきます。
必ずしも実際に誰かへ紹介する必要はありません。未来の自分に向けて、「疲れているときには読まないほうがよい」などと書いてもよいでしょう。
7. 一言だけ残す
何も思いつかない日は、一言だけでも十分です。
「不思議だった」
「難しかった」
「また読みたい」
「今の自分には早かった」
「結末だけ好き」
読書記録は、長く書くことよりも、残しておくことのほうが重要です。
一言のメモでも、本のタイトルと一緒に残っていれば、あとで記憶を呼び戻すきっかけになります。
「面白かった」から、もう一歩だけ進める方法
感想を書こうとしても、「面白かった」しか出てこないことがあります。
そんなときは、「何が」を付け加えてみましょう。
「登場人物同士の距離感が面白かった」
「語り手の話を信用できないところが面白かった」
「現実と夢の境界がわからなくなるところが面白かった」
次に、「どのように」を考えます。
「最初は普通の家族小説だと思っていたので、途中から印象が変わって面白かった」
「説明がほとんどないため、自分で考えながら読むのが面白かった」
このように、「面白かった」という感想を否定する必要はありません。そこに数語を足すだけで、その人にしか書けない読書記録になります。
読書メモは本を読み終えてから書かなくてもよい
読書記録は、読了後にまとめて書くものだと思われがちです。
しかし、読み終わったころには、途中で感じたことを忘れている場合があります。読んでいる最中に気になったことがあれば、短いメモを残しておきましょう。
「この人物は何か隠していそう」
「ここから急に文章の雰囲気が変わった」
「前の章と話が食い違っている気がする」
読了後に見返すと、自分の予想が当たっていたか、途中から作品の印象がどう変わったかがわかります。
特に長篇小説や、複数の人物が登場する作品では、途中のメモが記憶の補助にもなります。
ただし、読書を中断してまで詳しく書く必要はありません。ページ数と数語だけを残し、読み終わってから書き足す方法でも十分です。
読書記録が続かない原因
読書記録が続かないのは、意志が弱いからではありません。最初に決めたルールが厳しすぎることが、主な原因です。
毎回長い感想を書こうとする
一冊読むたびに数百文字の感想を書こうとすると、読書記録そのものが宿題になります。
感想の長さは、本によって変えてかまいません。たくさん書きたい本には長く書き、特に思いつかない本には一言だけ残しましょう。
すべての本を記録しようとする
過去に読んだ本を全部登録しようとすると、始める前から大仕事になります。
まずは、今日読み終えた本から記録すれば十分です。過去の本は、思い出したときに少しずつ追加していきましょう。
人に読まれる文章を書こうとする
他人に見せることを意識すると、言葉遣いや評価の妥当性が気になり、書けなくなることがあります。
自分用の読書メモは、書評ではありません。文章として整っていなくても、主語がなくても、箇条書きでも問題ありません。
未来の自分に意味が伝われば、それで役割を果たしています。
読書記録を続けるための小さなルール
読書記録を習慣にしたいなら、簡単なルールを一つだけ決めておくと続けやすくなります。
たとえば、次のようなルールです。
- 読み終えた日に一言だけ書く
- 印象に残った場面を一つだけ書く
- 星の数だけでも記録する
- 感想がない日は「感想なし」と書く
- 月末に、その月で一番よかった本を選ぶ
大切なのは、記録できなかった日があっても、まとめて埋めようとしないことです。
空白があってもかまいません。読書記録は、毎日欠かさず続ける日記ではなく、本との出会いを残すためのものです。
紙のノートと読書管理サービス、どちらがよい?
読書記録には、紙のノート、メモアプリ、表計算ソフト、読書管理サービスなど、さまざまな方法があります。
紙のノートは自由度が高く、図や文字を好きな場所に書けるのが魅力です。一方で、過去の記録を検索したり、外出先で確認したりするのは難しくなります。
スマートフォンやパソコンで記録する方法は、本のタイトルや著者名から過去の記録を探しやすいのが利点です。書店で気になった本を、その場で「読みたい本」として登録することもできます。
読書管理サービスのブクマでは、読んだ本や読みたい本を自分の本棚に登録し、感想を残せます。
感想は完成された書評でなくてもかまいません。一言のメモや、読みながら考えたことを、自分の読書の履歴として少しずつ蓄積できます。
大切なのは、評判のよい方法を選ぶことではなく、自分が本を読み終えたあとに無理なく開ける方法を選ぶことです。
読書記録は、未来の自分に向けて書く
読書記録を書くとき、読んだ本を正しく評価しようとする必要はありません。
感想がまとまっていなくても、理解できなかった部分があっても、その時点で感じたことを残せば十分です。
数年後、同じ本を読み返したときに、以前とはまったく違う感想を持つかもしれません。昔の記録と新しい記録を比べれば、自分の考え方や関心がどのように変わったかも見えてきます。
「うまく書けないから、何も書かない」のではなく、まずは一言だけ残してみてください。
その短い言葉が、未来の自分にとって、本と記憶を結び直す小さな目印になります。

